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小幡先生の論文がOncogeneに掲載されました

本論文は、消化管間質細胞腫 (gastrointestinal stromal tumor: GIST) の原因蛋白質の一つである 「Kitチロシンキナーゼ」が、細胞内のどこで増殖指令 (シグナル) を発信しているかを明らかにしたものです。
 GISTでは高頻度にKitの活性化変異が認められ、Kit阻害剤イマチニブが実臨床で用いられるようになりました。しかしながら、GIST細胞においてKitが 「いつ・どこで・どのように」 シグナルを発信しているのか不明でした。また、イマチニブ投与後に現れるイマチニブ抵抗型Kit変異体が治療上の問題となっており、そのシグナル伝達についてブラックボックスに包まれていました。
 これまで、Kitのシグナル伝達は細胞膜で起こると考えられてきました。しかし、以前に、著者達はマスト細胞白血病ではKitがエンドリソソームという細胞内小器官に蓄積し、そこでシグナルを発信することを見出し (Obata et al., 2014, Nature Commun.; 図1A, 図1C)、この報告により、GISTでも同様のメカニズムが示唆されました。蛍光イメージングと生化学的手法により、GIST細胞株および臨床標本におけるKitの細胞内局在の解析を試みたところ、予想外にKitは細胞膜でもエンドリソソームでもなくゴルジ体に集積していました (図1B)。さらに、GISTのKitはゴルジ体からのみ増殖シグナルを発信していることを見出しました (図1C)。重要なことに、イマチニブ抵抗型Kitもゴルジ体からシグナルを発信していました。
 本発表は、「何故GISTではKitがゴルジ体に停留するのか」, 「何故マスト細胞白血病とGISTの間でKitシグナルが起こる場が異なるのか」, 「他のがんにおけるチロシンキナーゼも同様の仕組みで増殖シグナルを起こすのか」 などの新たな疑問を生じるものとなり、今後それらについて取り組んでいく予定です。また、Kitの異常局在を標的とした新規治療法の開発に展開させ、イマチニブ耐性の克服の一助としたいと考えています。

論文タイトル
Oncogenic signaling by Kit tyrosine kinase occurs selectively on the Golgi apparatus in gastrointestinal stromal tumors.
Obata, Y., Horikawa, K., Takahashi, T., Akieda, Y., Tsujimoto, M., Fletcher, J.A. Esumi, H., Nishida, T. & Abe, R.

Oncogene, Advance Online Publication
http://www.nature.com/onc/journal/vaop/ncurrent/full/onc2016519a.html