RIBS Seminar
長谷 耕二 先生(慶應義塾大学 薬学部 生化学講座)
日時:6月14日(水) 16:30~17:30
場所:生命医科学研究所 2階 大講義室
腸内代謝物による宿主エピゲノム修飾と免疫制御
ノーベル生理学・医学賞受賞者であるJoshua Lederbergは、「宿主とその共生生 物は、それぞれのゲノムが入り組んだ集合体であり、superorganism (超生命体) として存在していると考えるべきである」と定義している。事実、我々の消化 管、特に大腸内腔は、細菌の生育にとって最適な環境を提供しており、あらゆ る環境中でも突出した高密度で細菌が棲息している。これら腸内細菌叢(マイ クロバイオーム)は、必須アミノ酸、ビタミン、短鎖脂肪酸などの有用な代謝 物を作り出す。一方、宿主免疫系は、病原微生物に対する生体防御応答を保証 しつつ、マイクロバイオームに対する免疫応答を抑制する。この免疫バランス が破綻すると、炎症性腸疾患(IBD)に代表される慢性的な腸菅の炎症の原因 となる。我々は腸内細菌が産生する酪酸が制御性T細胞(Treg)の分化を促進す ることを見出している(1‐3)。酪酸は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害 作用を示し、Foxp3遺伝子のプロモーターならびにCNS1‐3領域のヒストンアセ チル化を促すことでTreg分化を促進する。本セミナーでは、腸内細菌由来の酪 酸がTreg細胞を誘導することで、IBDのみならず、関節リウマチなど自己免疫疾 患の発症抑制にも寄与するメカニズムについて紹介したい。
【参考文献】
1. Y. Furusawa et al., Nature. 504, 446–450 (2013).
2.Y. Obata et al., Nat Immunol. 15, 571–579 (2014).
3.C. Ohnmacht et al., Science. 349, 989–993 (2015).
Host:久保允人 (生命医科学研究所)
20170614
- Language
- JPN
- ENG