水田龍信准教授、北村大介教授らのグループの研究成果がScienceに掲載され、ハイライトでも取り上げられました。本研究は、生命医科学研究所とハンブルグ―エッペンドルフ・ユニバーシティーメディカルセンターとの共同研究の成果です。
好中球細胞外トラップ(NET)は、炎症時に好中球から循環血液中へ放出される網目状の構造物です。細胞内顆粒成分と、クロマチンDNAからなり、病原微生物などを捕捉して中和する役割を有し、宿主防御の一端を担っています。しかし、時にはその過剰な放出が血栓症を誘発し、宿主を攻撃する結果となります。本研究では二つのDNA切断酵素、DNase1およびDNase1L3が、循環血液中のNETを分解し、血栓形成を抑制することを見出しました。好中球増多症や敗血症の際にはNET形成が亢進し、血管を閉塞させ、臓器損傷を引き起こしますが、本研究成果により、DNase1およびDNase1L3がその予防や治療に使える可能性が示唆されました。
DNase1L3(別名DNase γ)は本学薬学部田沼靖一教授らにより発見された酵素で、その遺伝子改変マウスも本学生命医科学研究所で作成されました。DNase1L3の生化学的解析も主に本学で行われ、NETを分解する可能性に関しては水田龍信准教授、北村大介教授らのグループが既に報告しています。本研究は、疾患とその治療という臨床応用の可能性を示唆したという点で意義が有ります。
Host DNases prevent vascular occlusion by neutrophil extracellular traps
Jiménez-Alcázar M, Rangaswamy C, Panda R, Bitterling J, Simsek YJ, Long AT, Bilyy R, Krenn V, Renné C, Renné T, Kluge S, Panzer U, Mizuta R, Mannherz HG, Kitamura D, Herrmann M, Napirei M, Fuchs TA.
Science. 2017 Dec 1;358(6367):1202-1206.
http://science.sciencemag.org/content/358/6367/1202.full
http://www.tus.ac.jp/today/archive/20171204001.html
